MD法を行った腰椎椎間板ヘルニア1359例の発症年齢は高齢化を示した。少子高齢化の影響か、それとも私のデータに限ったことか。
1.腰椎椎間板ヘルニアの発症年齢の高齢化
平成14年12月から令和2年3月までの約17年間にMD法を行った腰椎椎間板ヘルニアは1359例。
男性:女性=877:482。
男性が女性の約1.9倍、過去のデータ同様の結果でした。ただし年代別では、20代で男性が3.42倍、70代で男女ほぼ同数。
今まで、発症は20~40代に多いとされてきましたが、私のシリーズでは60代で最も多いという結果でした。比較データは1900~2000年代と古いことと、私のシリーズでは腰椎症や脊柱管狭窄症に合併したヘルニアが多いことから、発症が高齢層へシフトしたと推測されます。他の病変を伴わない純粋な椎間板ヘルニアに限ったなら、今までの報告に近似した結果になったかも知れません。
私のデータは、術中にヘルニアを確認して摘出術を行った症例が対象であり、その中には同時に狭窄症に対して除圧術を加えたものが含まれています。
2.再発ヘルニアが全体の10%を占める。
椎間板ヘルニアの再発は少なくありませんが、自然治癒があるため、再手術が必要となるケースは限られていると思われます。私のシリーズでは、手術を要した再発ヘルニアは、2010年1月から20202年3月までの532例中55例(10.3%)。私は、他の医療機関の再発例を椎間板ヘルニアに限らず積極的に受け入れてきましたので、手術全体の中で再発手術例の比率が高いのが特徴です。一般に再発手術は敬遠されがちで、再発患者を積極的に受け入れる脊椎外科医は全国的にも極めて少ないと思います。私は、再発例でもMD法を用いる方針を取っています。
(注)10.3%はヘルニアの再発率ではなく、全ヘルニア手術に対する再発手術例の比率です。私のシリーズにおける再発率は3%以下です。
3.手術には部位診断が重要。
椎間板ヘルニアの発生部位についてです。手術的観点から、ヘルニア局在を解剖学的名称で正確に表示するのが曖昧さを避けるために適切と考え、次のように分類しています。
椎間板ヘルニアの部位別頻度
脊柱管内:413例(78%)
脊柱管内ー椎間孔内:6例(1%)
椎間孔内:52例(10%)
椎間孔内-椎間孔外:6例(1%)
椎間孔外:55例(10%)
(次もご参照下さい:腰椎椎間孔部ヘルニアに関しhttps://www.spine-drshujisato.com/2020/06/23/lateral-disc-hernia/)
部位別には、脊柱管内ヘルニア(中心型+後外側型)が最も多く413例(78%)、椎間孔内(外側型)ヘルニア52例(10%)、椎間孔外(超外側型)とヘルニア55例(10%)、脊柱管から椎間孔にまたがるヘルニアと椎間孔から椎間孔外にまたがるヘルニアが各6例(1%)。
私のシリーズでは、椎間板ヘルニアの78%が脊柱管内、残る22%が椎間孔内・外でした。近年、高精度MRIによって椎間板ヘルニアの正確な部位診断(局在診断)が可能になりました。ヘルニアの局在は手術を行う際に極めて重要になります。なぜなら、ヘルニアの局在に応じて手術のアプローチを決めるからです。MD法はヘルニアがどの部位にどの範囲で存在するかによって、最短の到達路と骨の削除範囲を決定します。ヘルニアの正確な解剖学的情報を得ることが手術の成否と深く係わっているのです。
手術アプローチを含めて、MD法の説明は下記の記事をご参照ください。
MD法の基礎と応用:https://www.spine-drshujisato.com/2020/08/10/lumbar-disc-hernia-md-method/