腰椎分離症・分離すべり症 154例の約30%で、MD法による神経根除圧術を施行。固定術か除圧術か、それが問題!

腰椎分離症・分離すべり症

1.はじめに

腰椎分離症・分離すべり症は無症状で偶然発見されることや、繰返す腰痛があっても生活に大きな支障のないことが多い疾患です。しかし、一旦、悪化・進行のプロセスに入ると生活が大きく損なわれていきます。

これらの疾患は、腰痛と坐骨神経痛、下肢のしびれ、歩行障害などが主症状です。分離症では通常、腰痛のみですが、分離のため腰椎間が不安定になって椎間板ヘルニアや椎間孔狭窄が起こり、坐骨神経痛などの下肢症状が発現します。一方、分離すべり症では、大多数が椎間孔内・外の狭窄症によって坐骨神経痛や下肢のしびれ・筋力低下、歩行障害などが発現します。

2.合併病変とは。

分離症(45例)
椎間孔内・外狭窄症30例、超外側型ヘルニア8例、後外側型ヘルニア2例、外側型ヘルニア1例。

分離すべり症(109例):
椎間孔内・外狭窄症101例、超外側型ヘルニア2例、後外側型ヘルニア1例、脊柱管狭窄症1例。         
   注:症例数には、合併病変の明かでない腰痛のみの症例が含まれています。

このように合併病変は、椎間孔部に集中していることがわかります。疾患の性質から頷けることです。

3.手術治療について

手術治療は、分離や分離すべりに伴う腰椎間の不安定性合併病変に対するものに分けられます。
前者に対しては固定術、後者には神経除圧術が必要です。
通常は、除圧術と固定術あるいは制動術を一期的に行います。しかしながら腰椎の不安定性が殆ど見られないケースでは、固定術は行わずに合併病変に対する神経除圧術のみで症状の改善を図ることが可能です。

私のシリーズでは、男性が114例(74%),女性が40例(26%)。年齢は24歳から82歳と広い分布を示し、平均年齢は58歳。70歳以上の高齢者は39例(25%)でした。

70歳以上のMD法は23例(約60%)、固定術は16例(約40%)。一方、70歳以下のMD法は25例(22%)、固定術は90例(78%)でした。
このように70歳未満では固定術の比率が高く、70歳以上ではMD法の比率が高いという結果でした。

このように患者さん個々にカスタマイズした手術法を選択することで、全年齢層で手術治療を行うことが可能になります。

4.MD法を行ったケースの紹介

患者さんは、約60年間の腰痛歴がある82歳の女性。両側の坐骨神経痛の他、両下肢のしびれと筋力低下、筋萎縮などがあり、歩行はほとんど不能な状態でした。腰椎XPでは、L5/S1に分離すべり症と側彎症を認め、MRIでは矢印で示すように両側L5/S1の椎間孔に高度の狭窄を認めました。

患者さんは、鎮痛剤でコントロール困難な痛みが手術で少しでも和らぐことを期待されました。神経機能障害は長期に渡っており、下肢に神経障害と廃用性も加わった筋萎縮がかなり進んでいることから、歩行機能の改善見込みは極めて低いことを了解して頂いた上で、MD法による椎間孔内のL5神経根・節の除圧術を行いました。

5.MD法による両側椎間孔内のL5神経根除圧術

皮膚切開は両側20mm、MD法による後外側筋間アプローチで、両側の椎間孔内でL5神経根・節の直接除圧を行いました。
両側の椎間孔内で強く拘扼された神経根が除圧された状態をシェーマと術中画像で示します。
術中所見として、両側の神経根上に瘢痕組織が形成され、強い癒着を認めたため、神経根除圧はかなり困難であったため、この種の手術としては180分と長い時間を要することになりました。幸い、手術による神経根障害は発生しませんでした。

6.術後画像所見

術前CT(1から3)で、両側椎間孔の高度な骨性狭窄を認めますが、術後CT(4から6)では椎間孔が両側で十分に拡張されています。また、術後3DCTでは骨の削除が極めて少ないことがわかります。
MD法による神経根除圧術は骨の破壊操作を最少に抑えることができるため、術後に腰椎のすべりが発生することは希と言っても過言でありません。

7.なぜMD法を選択したか

この患者さんの分離すべり症は、病期としては、終末期にあると判断されます。つまり、椎間板腔は潰れ、すべり部の不安定性は靱帯・関節の化骨などによって全く失われ、椎間孔の高度狭窄のみが神経根障害の原因ととらえてよい時期です。そのためMD法による除圧術を選択しました。残念なことは、もっと早い段階で手術ができていれば、辛い痛みと不自由な生活を持ち続けずに済んだのではないかと思われることです。

それでも、術後は鎮痛剤による痛みのコントロールがしやすくなり、歩行訓練を行えるところまで改善したことは患者さんにとって幸いな結果であったと思います。

8.まとめ

腰椎分離症・分離すべり症は一般的には除圧固定術が適応になりますが、患者さんの条件、特に高齢者やそれに準じた腰椎の患者さんでは、除圧術単独の選択肢があってよいと私は考えています。腰椎の不安定性が問題にならない患者さんでは、除圧術のみで良好な結果が期待できるからです。除圧法としては、腰椎の破壊的な操作を最小にできるMD法が優れていることに疑いありません。

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