外側型腰椎椎間板ヘルニアの頻度は少ない(約8%)とされてきたが、診断が困難なことが原因。私のシリーズでは22%と決して少なくない。

2020/8/24 更新

1.椎間孔部ヘルニアと外側型ヘルニアの違い

始めに、一般的に使われてきた外側型ヘルニアとここで使われる椎間孔部ヘルニアの用語の違いを説明します。外側型ヘルニアは通常、ヘルニアが椎間孔内にある狭義の外側型と椎間孔外にある超(最)外側型の二つを総称する用語として用いられています。手術アプローチの観点からは、これを次の四つに分類し、総称名を外側型ヘルニアから椎間孔部ヘルニアに変え、外側型はあくまでも狭義のものに限定すべきと考えます。そうすることで定義の違いから起こる混乱が避けられるのではないかと思います。(これはあくまでも私案です。)

椎間孔部ヘルニアの4型

  • 椎間孔内(intraforaminal:IF)
  • 椎間孔外(extraforaminal:EF)
  • 脊柱管外側部(lateral canal:LC)+椎間孔内(IF)
  • 椎間孔内(IF)+椎間孔外(EF)

平成22年1月から令和2年3月までの約10年間に、椎間板ヘルニアが腰痛や神経症状の原因と診断でき、MD法を施行したのは542例、このうち119例(22%)が椎間孔部ヘルニアでした。

2.椎間孔部ヘルニアの病型と高位

病型:脊柱管内(CC*+LC);423例(78%)、脊柱管外側部+椎間孔内(LC+IF);6例(1%)、椎間孔内(IF);52例(10%)、椎間孔内+椎間孔外(IF+EF);6例(1%)、椎間孔外(EF)が55例(10%)。
   CC*:central canal (脊柱管中心部)

高位:L1/2;3例(1%)、L2/3;23例(4%)、L3/4;51例(9%)、L4/5;250例(46%)、L5/S1:215例(40%)。

椎間板ヘルニアは従来から言われているように、L4/5とL5/S1に好発し、全体の86%を占めました。

椎間孔部ヘルニア:過去のデータによる頻度は8%前後ですが、私のシリーズでは22%でした。
この頻度の差は、診断精度の違いを示すもので、将来的に全体の診断精度が上がれば、椎間孔部ヘルニアの頻度は、20%前後になると予想されます。

3.椎間孔部ヘルニアの内訳

病型:椎間孔内ヘルニア(IF)と椎間孔外ヘルニア(EF)は、それぞれ52例(44%)と55例(46%)であり、ほぼ同数。また脊柱管外側+椎間孔内(LC+IF)ヘルニアと椎間孔内+椎間孔外(IF+EF)ヘルニアは、それぞれ6例(10%)ずつでした。

高位別:椎間孔外(EF)は下位ほど多く、L5/S1が36例と最多。一方、椎間孔内(IF)はL4/5が24例と最多、次いでL5/S1の13例、L3/4 の9例の順でした。

脊柱管内ヘルニアはL4/5、椎間孔部ヘルニアはL5/S1で最も多い

4.まとめ

頻度:椎間板ヘルニアの内、脊柱管内は78%、椎間孔部は22%でした。椎間孔部の内、椎間孔内と椎間孔外はいずれも約40%とほぼ同じでした。一方、椎間孔から脊柱管内、さらに椎間孔内から外にまたがるヘルニアが少数例ありました。

高位:椎間孔部ヘルニアは脊柱管内同様に下位腰椎に好発し、椎間孔外はL5/S1、椎間孔内はL4/5で最多でした。

従来、特に診断が困難とされてきた超外側型(あるいは再外側型)ヘルニア、すなわり椎間孔外ヘルニアは、L5/S1に好発しており、L5神経根症を呈するのが特徴です。しかし、腰椎と神経根には亜型があることから、その診断には注意を要します。この椎間孔外ヘルニアの診断精度を上げることが、これからの課題と考えられます。

5.椎間孔部ヘルニア対するアプローチ(MD法)

MD法による手術アプローチは、脊柱管内(CCとLC)と椎間孔内(IF)は正中アプローチ椎間孔外(EF)は後外側筋間アプローチを原則とします。また椎間孔内+椎間孔外(IF+EF)では後外側筋間アプローチがヘルニア処理の観点から合理的なアプローチです。
合理的とは、ヘルニアに最短距離で到達でき、椎間関節などの骨構造の破壊操作を最も少なくできるという意味です。
MD法では、ヘルニアの局在に応じて正中アプローチと後外側アプローチを使い分けることが重要なポイントになります。

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