腰椎椎間孔外狭窄症は医師が疑っても、確定診断にはなかなか至らない疾患です。手術法は医師によって異なるため、患者には戸惑いが起こり易い。

腰椎椎間孔部病変として、椎間板ヘルニアと狭窄症がある。ヘルニアには椎間孔内(外側型)ヘルニアと椎間孔外(超外側型)ヘルニアがあり、狭窄症には椎間孔狭窄症と椎間孔外狭窄症(far-out syndrome)がある。
今回は、診断と手術治療がいまだ困難な椎間孔外狭窄症に
ついて、画像所見を中心に説明します。

図はL5神経根がL4/5の脊柱管内で硬膜管(馬尾が入っている部分)から分かれて、L5/S1の椎間孔を通り、椎間孔外にでていく様子を表しています。椎間孔とは、頭側に椎弓根、尾側に椎間板、ここでは示されていませんが背側の椎間関節と腹側の椎体に囲まれた狭い骨のトンネルで、その中を神経根が通ります。

L5神経根は三カ所で障害される可能性があります:L4/5の脊柱管内L5/S1の椎間孔内、そしてL5/S1の椎間孔外です。それぞれを赤、緑、柿色のリングで図に示してあります。

今回説明の椎間孔外狭窄症は、仙骨翼とこの図には示されていませんがL5横突起、そしてこれらが作る偽関節椎間板などがL5神経根の圧迫に関与します。

椎間孔外狭窄症のレベルは、ほぼ全例がL5/S1。それは解剖学的な理由によるのですが詳細は省きます。症状は、L5神経根が障害されるため坐骨神経痛を伴うことが多い。


図は75歳女性のL5/S1の椎間孔外狭窄症です。赤矢印で示す椎間孔外でL5神経根は膨隆・硬化した椎間板と仙骨翼、椎間関節(この場合は上関節突起)によって圧迫されています。
上段はMRIの横断像と冠状断像(腰椎を前後に撮像したもの)です。椎間孔外を左右で比較すると矢印のある右側で神経根の通路が狭いことが分かります。
下段はCTの横断像と冠状断像。冠状断像では、赤輪で示すようにL5横突起と仙骨翼が偽関節を形成しています。この偽関節が椎間孔外狭窄症に関係するケースが多く見られます。


図は術後のMRIとCTです。手術の詳細は省きますが、この患者さんでは、2cm未満の小切開でチュブラーレトラクター手術顕微鏡を用いたMD法によって椎間孔外で圧迫されたL5神経根の除圧を行いました。骨の削除範囲を赤矢印で示します。術前と比べると、どこをどの程度削ったか、わかると思います。
私は、椎間孔狭窄症も椎間孔外狭窄症も基本的にMD法で神経根の除圧を行いますが、ケースによっては、少ないですが固定術を併用することがあります。

骨の削除を術前後で比較した3D-CTです。正面像では、L5神経根のトンネルが術側で広くなっているのがわかります。後面像では、L5神経根の椎間孔内から外への通路(赤矢印)が確認できます。椎間関節は半分以上が残されています。このように骨の削除が少ないため、MD法では後々、腰椎自体に問題が起こることは極めて少ない。

ポイント椎間孔外狭窄症はほとんどがL5/S1で、L5神経根が障害されます。そのため症状は臀部から大腿外側・後部の痛み、いわゆる坐骨神経痛を呈すケースが多い。しかし、診断の確定にはしばしば困難を伴い、手術法は医師によって異なることが多い。

このことを良く承知した上で、納得のいく手術法を選択することをお勧めします。。

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