術後症状の改善が悪いのに、「腰椎椎間版ヘルニアの手術は成功した」と医師から説明を受けました。本当に成功したのであろうか?この疑問に答えます。

脊椎外科医の戦場 failed back surgery

辛い痛みのためにヘルニアの手術を受けたのに、期待していたほど痛みが良くならない。医師は「手術は成功した」と説明するけれど本当に成功したのだろうか、こんな疑問にとらわれる患者さんに時折出会うことがあります。

痛みの程度を客観的に計測する方法はないため、患者さんが口にする不満の言葉より、「手術は成功した」という医師の言葉の方が優勢になり、結局のところ、患者さんは不満な結果を受け入れるほかなくなります。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。これには次の二つの可能性があります。(1)手術は間違いなく成功しているが、患者の症状が回復できない程、神経障害が進んでいた、つまり、患者は「手術を受けても期待できない結果」を期待していた場合です。もう一つは(2)医師が手術は成功したと確信していても、医師に気づけない問題があったために症状改善が不良に終わった場合です。

(1)の期待できない結果を期待させて、患者に手術を受けさせたのであれば、医師の術前説明が不十分であったことになります。つまりインフォームドコンセント(説明と同意)の問題です。術後に誤解が起きないように、手術による症状改善には限界があることを術前にきちっと説明しおくべきことなのです。手術は何を目的に行うのか、期待できることと期待できないことは何なのか、それらが患者にしっかりと理解されていれば、たとえ満足できない結果に終わろうとも、ある程度は想定内のこととして受け止められるはずです。

(2)は患者にとっても医師にとっても不幸な問題です。なぜなら医師は自ら行った手術に問題はないと信じ、患者が良くならない真の原因に気づくことができないからです。このような場合には、医師との話し合いは押し問答に終わることになるのが普通のため、他の医師にセカンドオピニオンを求める他ありません。そうしたからといって、真の原因にたどり着く保証はありませんが、とにかく諦めないことです。諦めれば、良くできる可能性を完全に失うからです。この問題はfailed back surgery(腰椎手術失敗)の一つであり、ヘルニアによる神経根の除圧(神経根の圧迫が取れること)が不十分なために起こります。術後も、立位や歩行、姿勢・動作で痛みが増強し、安静で軽減するのであれば、failed backの可能性が高いと考えられます。

以上、腰椎椎間板ヘルニアの術後、期待した結果が得られず良くならない場合には、上記した中のどちらかが原因と考えて対処することが必要です。(1)の場合は、症状の軽減を図るための対症療法、(2)では再手術の可能性を探ることになります。

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