医療相談室 Q&A集

医療相談室Q&A 腰痛に悩んでいます。これからの治療についてご相談

-医療相談2-
腰痛に悩んでいます。これからの治療についてのご相談。

62歳女性

 6、7年前に腰痛が始まり、脊椎専門医から少し脊柱管狭窄があると診断されました。日常的にはそれほど支障がなかったことと手術を勧められなかったことから、そのまま経過をみながら現在まできました。2年程前から左を下にして寝ていると左足側面がひどく痛くなったり、左側の腰が痛くなるようになりました。特に、朝は腰全体が締め付けられるように痛くて、しゃがんだり、椅子に座る時や立ち上がる時に痛みます。
長く立っているとやはり足や腰が痛くなりますし、長く歩くと今度は膝が痛くなります。
そういう具合で最近は日常生活にやや不都合を感じるようになりました。
左側面の腰から足全体の筋が右側より硬直しているのがわかります。

83歳で亡くなった母がやはり腰痛に苦しみ、晩年手術を望んでいましたが、年齢的なことがあるのかどの先生も手術をしてくださいませんでした。
私も母のようになる前に手術をしたほうが良いか悩んでおります。
すべり症も少しあると言われたような気もしますが、画像上の脊柱管の狭窄の度合いが痛みに比例するものではなく、個人差があると聞いていますので、はっきりした痛みの原因がわかりません。
今後の治療をどう考えたらよいのか、アドバイスをお願いします。

回答:
  症状からL5神経根症が疑われます。L5神経根症であれば、障害レベルはL4/5とL5/S1となります。前者なら脊柱管の外側部、後者ならL5/S1の椎間孔内・椎間孔外となります。一般的に脊柱管狭窄症では、馬尾症候が中心の場合には両側下肢に対称的に症状が出現しますが、神経根症の場合には片側から始まり、やがて両側へ進むことが多いです。6から7年の経過で下肢の症状は左のみということになりますと、脊柱管狭窄症の一般的な経過とは異なります。さらに症状が立ち上がったり、座ったりの動作でも増強することも脊柱管狭窄症として一般的ではありません。

診断に関しては、62歳という年齢と女性であること、先の医師からすべりについても言及があったようなので、L4/5の脊柱管狭窄症にすべり症が関与したものか、L5/S1の椎間孔内・外の狭窄性病変の可能性が高いと考えられます。確定診断は、レントゲン撮影とMRI、CTを用いて行うことができます。

治療に関しては、L5神経根症による症状がはっきりとしており、生活にも支障がみられるようになっていることから、私案として紹介した腰椎変性すべり症のステージ分類(https://www.spine-drshujisato.com/2020/05/26/lumbar-spondylolisthesis-stage/)の3に該当します。各種の保存治療が効果を失う時期であり、今後ステージ4へと進む可能性が高いことから、手術治療を検討すべき時期に入ったと考えられます。手術に関しては、L4/5の変性すべり症・脊柱管狭窄症の場合もL5/S1の椎間孔内・外の狭窄病変の場合でも、ともに「神経根除圧のみ」と「神経根除圧+腰椎固定術」の二つの選択肢があります。基本的には、低侵襲手術であること、可能なら神経根除圧術のみで対応できることが良いと思いますが、このあたりのことは脊椎外科医によって判断が違いますので、慎重に納得できる方法を選択されることです。

追加として、お母さんが同様の悩みを抱え手術を受けることができないまま亡くなられたとのこと、大変お気の毒なことです。時代背景のこともありますが、現在は年齢を問わず、全身麻酔をかけられる身体であれば、腰椎変性疾患の手術ができるようになりました。それは、80,90代の超高齢者でも症状の原因部位を正確に診断し、ピンポイントに神経の圧迫を取る技術が進んだからです。

また、歩行中に膝が痛くなるとありますが、これは前屈みの姿勢で歩くようになるため、膝に負担がかかり痛むもので、長期化すると膝関節症が進みます。悪い腰の状態が長引くと、膝関節まで傷めますので注意が必要です。

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