腰椎椎間板ヘルニアを慢性化させると、腰椎変形と腰痛の悪循環が起こり、別の腰椎病変を引き起こす危険性が高まる。

腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛や坐骨神経痛が慢性化すると、腰椎の変形が進んで、腰痛が悪化し、別の腰椎病変が発生します。これが腰椎椎間板ヘルニアを慢性化させてはならない理由です。

ヘルニアの患者さんを診察していて目にするのは、腰をひどく横に曲げて座る痛々しい姿です。これは痛みを和らげるため、身体が自然とそのような姿勢になります。ヘルニアが左にあると、腰は右に曲がり、右にあると左に曲がる。ヘルニアがうまく吸収・縮小したなら、腰痛はなくなり、腰の曲がりも解消します。しかし、ヘルニアがそのまま残り慢性化したなら、腰痛は持続して骨の曲がりが続きます。骨の曲がる程度は年齢によって異なり、身体の柔らかい若い人ほど曲がりは強くなります。以前に、びっくりする程、腰椎が変形した椎間板ヘルニアの小児を診たことがあります。痛々しい姿で体育をやっていたそうです。この骨の曲がりは、成人でヘルニアが長期化すると固定して、元に戻ることの出来ない側弯症へ進むことがあります

椎間板ヘルニアによる痛みが、なぜ腰椎の曲り・変形を起こすのか。その理由が分かれば、椎間板ヘルニアによる痛みを長期化させてはいけないことが理解できると思います。

腰椎ヘルニアの患者さんは、通常、座位で痛みが強くなります。これは腰痛でも坐骨神経痛でも同じです。座位では、身体が前傾するため重心が前方に移動します。するとヘルニアになった椎間板をさらに後方、すなわち神経根側へ膨隆させるため靱帯や神経根がよけい圧迫・刺激されます。こうして痛みが増強します。また、座位による痛みは、身体をヘルニアと反対側へ傾けることで、重心が移動して和らぎます。そのため、腰を横に曲げた痛々しい姿になるわけです。一方、立位では重心が後方へ移動するため、椎間板の膨隆は軽くなり、痛みは軽減します。ヘルニアの患者さんが座位よりも立位を好むのはそのためです。

このようにヘルニアの患者さんは、日常生活の中で常に身体の重心をヘルニアから反対側へ移動させることで痛みを和らげています。痛みが長期化し、腰椎を曲り続けている内に、ついには変形性側彎症へと進め、慢性的な腰痛に悩むことになります。

以上説明したように、痛みと腰椎変形の悪循環を繰返すことによって、慢性的な痛みの発生母地となる変形性側彎症へと進むので、椎間板ヘルニアを慢性化させてはならないのです。

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