腰椎変性すべり症は女性に多く、  人生における華やかな日々を蝕み、老後の夢を奪い取る痛ましい病気です。

腰椎変性すべり症はどのような経過をたどる病気かをよく理解して治療法を選択することが重要。「以前悪かった時も良くなったから、今度も大丈夫」と必ずしもならないのがこの病気。「悪化・進行」がいつまでもつきまとう病気です。

症状が進む順序にしたがい、腰椎変性すべり症を4つのステージに分類できます。これはあくまでも私案であることを予めお断りします。この分類は、一般の方々が症状から、すべり症の重症度を自己判断できることが目的です。さらに、どんな治療法が必要な段階にあるのかも判断できるのではないかと思います。

ステージ1腰痛期:腰痛のみの時期。無理な姿勢や動き過ぎた時に腰痛が起こる。動作の変り目に腰がズキッと痛むこともある。この時期は、腰痛がでたり、直ったりを繰返す。生活の支障は腰痛の程度・期間にもよるが、安静・コルセット・湿布・鎮痛剤などの一般的な対処法でしのげる程度。30~40代に多い。

ステージ2神経根圧迫前期」:腰痛に続く症状は、神経根の圧迫が始まるために起こる臀部や太ももの痛み、坐骨神経痛であることが多い。痛みは立位や前傾姿勢で増強するため、女性では台所仕事が辛くなる。坐骨神経痛で歩行が困難になることもある。この時期は腰痛期と同じで、痛みは常にあるわけではなく変動する。生活に支障をそれなりに感じるが、仕事の多くは可能なステージ。

ステージ3神経根圧迫後期」:この時期には、痛み・しびれが臀部から、さらに足趾へと広がる。障害神経根が支配する下肢の皮膚領域に痛み・しびれが出現する。痛みは強く、持続するため、生活の支障と仕事の影響が次第に大きくなる。前期と後期は40~50代に多い。

ステージ4神経根障害期」:神経根障害が進んだ時期で、強い下肢の痛み・しびれの他、足に冷感が強くなり、筋力の低下も加わり、立位や歩行がより困難になる。日常生活と仕事への影響は強くなり、しばしば休養・休業が必要になる。このステージは60代以降に多い。通常、70代以降になると症状の進行は緩やかだが、生活の質の低下が目立つ。

以上が、症状と生活状況に基づく本症の「ステージ分類」です。障害される神経が神経根か馬尾かで症状は異なりますが、辛い痛みを起こすのは神経根であることから、これを用いて説明しました。馬尾の場合でも基本は同じですが、痛みは少なく、両下肢のしびれや間欠性跛行が中心症状となります。馬尾症候が中心のすべり症は神経根症状のものよりも、一般に進行は遅く、生活の支障は軽い傾向があります。

ステージ分類」とレントゲン・MRI・CT所見との関係:「腰痛期」では、すべりとその部位に異常な動きを認めますが、神経根の圧迫は認めません。一方、「神経根圧迫前期」から「神経根障害期」では、すべりと脊柱管狭窄は進行し、神経根圧迫が増強します。ただし、70代以降では、すべりの進行は軽いか、ほとんど起こりませんが、脊柱管狭窄が進行するため神経根の圧迫が強くなり、神経症状が悪化します。

ステージ分類」による治療法:「腰痛期」から「神経根圧迫前期」では保存治療が基本。「神経根圧迫後期」以降、保存治療の効果がなくなった患者さんでは手術治療の検討が必要になります。「神経根障害期」では、原則として手術治療を考慮すべきです。これは大まかな判断基準です。最終判断は患者さんの痛みやしびれの程度、神経機能と生活の障害程度などを総合的に判断して慎重に決定すべきことは言うまでもありません。大事なことは、「こんなことになるなら早く手術を受けておけばよかった」と後から患者さんに言わせることのないように、適切な判断を適切な時期に医師が責任をもって行うことであり、患者さんもただ手術が怖いと現実の問題から目をそらせ続けないいことです。

手術治療には色々な考え方、手術法があります。変性すべり症の手術には、「すべり」に対するものと脊柱管狭窄・椎間孔狭窄に対するもの、中には側彎変形に対するものさえあります。これらに対して、全体としてどのような手術を計画するか、医師にとってたいへん大きなテーマです。
手術治療については、私が経験した多くの手術例をもとに別の機会に説明する予定です。

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