腰椎椎間板ヘルニアが自然治癒へ向かっているかどうか、患者自身で判断する方法

椎間板ヘルニアによる腰痛や下肢痛が、なぜ手術をしたわけでもないのに治るのか。どんな時にヘルニアが自然治癒に向かっていると判断できるのか、この疑問に答えます。

ヘルニアの症状が手術することなく自然に治った患者をMRIで調べると二通りあることがわかりました。一つはヘルニアが完全に消えてしまった患者、もう一つはヘルニアがそのまま残っているにも係わらず、症状が消失した患者です。

1.ヘルニアはなぜ自然に消えるのか

ヘルニアが消えてなくなるのは、白血球の一種であるマクロファージの貪食機能によってであり、ヘルニアを分解・吸収するためです。ヘルニアの大きさにもよりますが、多くは3ヵ月くらいまでに跡形なく消えてしまいます。大きなヘルニアだともっと時間が必要です。

ヘルニアが自然治癒に向かうケースでは、発症後1ヵ月くらいには腰痛や坐骨神経痛などの痛みは軽くなり、立ったり歩いたりがしやすくなります。一方、下肢のしびれや筋肉の麻痺がある場合には、これらが改善するには少なくとも3ヵ月前後必要になります。つまり、発症後1ヵ月頃までに痛みが軽減し、その後しびれが足先へ向けて下がり始めるなら、ヘルニアは自然治癒に向かっていると判断できます。

2.ヘルニアが縮小・消失しないのに、なぜ症状がよくなるのか?

ヘルニアが吸収消失せずに、そのまま残ているにもかかわらず、症状が改善・消失するのはなぜでしょうか。それは、ヘルニアによって神経根周辺に起こった炎症が消退するためです。ヘルニアによる強い痛みには、この炎症が大きく係わります。ヘルニアが起こって最初の1週間くらいは、この炎症が強いために激痛になります。一般的に、炎症は1週間も過ぎると消退に向かいますが、ヘルニアが神経根を刺激し続ける状態があるなら、炎症は長引き、痛みは治まりません。MRI画像でヘルニアがそのまま残っているにも係わらず、痛みが消失するケースは、ヘルニアによる神経根の圧迫・刺激が軽いということになります。ヘルニアが残っていても症状が良くなるケースは、ヘルニアの大小やヘルニアが発生した部位、脊柱管の広さなどが関係しています。

3.ヘルニアの自然治癒が意味するもの

腰の椎間板ヘルニアは、約8割は自然治癒し、残る2割は自然治癒しないと言われています。自然治癒する8割では、上記した二つのどちらかが起こっているということです。つまり症状が自然消失したとしても、MRI画像上でヘルニアが完全に消えたことを意味しないということです。このようにヘルニアが残ったまま症状が消失したケースでは、消えずに残ったヘルニアが次のイベント、すなわち再発の母地になることがあります。ヘルニアの再発は、ヘルニアが消えてしまったケースでもあり得るので油断はできません。

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