原因不明とされた30代女性の腰部脊柱管狭窄症の患者  -なぜ原因不明とされたか-

腰椎変性疾患は原因不明とされることがしばしば起こります。その原因は色々ありますが、今回は比較的多い脊柱管狭窄症に関係したケースを紹介します。

患者:30代女性。3年前にL5/S1の椎間板ヘルニアの手術を受けた。1年前から腰痛と右に強い両側の下肢に痛みが発現。立っている、歩いていると痛みが強くなるが、座ると痛みは軽くなる。この症状がだんだんと強くなり、生活に支障がでてきたため、以前に手術を受けた病院を受診。MRI検査でL5/S1にヘルニアの再発はなく、その他にも目立つ問題はないと診断された。ところが症状が改善しないため私の外来を受診した。

主な検査所見:症状は右に強い両側のL5神経根症で、脊柱管狭窄症に特徴的な間欠性跛行を認めた。MRIではL4/5に発育性脊柱管狭窄症の所見があり、L5/S1にヘルニア再発はなかった。

診断:L4/5の発育性脊柱管狭窄症に軽い椎間板膨隆が起こったための両側L5神経根症。

治療:保存治療は効果なく、生活に支障が大きいため手術を決定。手術はMD法でL4/5の片側から両側の脊柱管を拡大する椎弓形成術を行い、L5神経根の除圧を行った。

結果:術後直ぐに両下肢を伸ばした仰向け姿勢で寝ことができるようになった。術前にはこの姿勢を保てなかった。手術翌日から立っていること、歩くことが改善し、2週間後の退院時には腰痛も間欠性跛行も消失していた。

コメント:なぜ原因不明とされたのか。その理由は、MRIの脊柱管狭窄も椎間板膨隆もそれぞれの程度は軽いため、単なる加齢変化と判断されたためでしょう。このタイプの脊柱管狭窄症は、見落とされたり、たいしたことないと判断されることが少なくありません。診断ポイントは、症状が脊柱管狭窄症に特徴的な間欠性跛行であったこと、両側のL5神経根の障害を認めたこと、そして発育性脊柱管狭窄のMRI所見にあります。

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