私の診療日誌(1)
診療の旅 2020/8/11-2020/8/14
長年勤めた病院を辞して、大げさな言い方かもしれませんが医者人生を一旦リセットする道を選びました。私のような人間は、理想とか理念とか、いわば太陽や北極星のような、必要になった時にいつでも自身の立ち位置を確かめられる目印が、人生において必要と考えています。それは個人の生き方としてもそうですが、組織の責任者となれば、なおさらのこと必要と思っています。今回、自ら病院を去ることにしましたが、これまで胸に秘めてきた理想・理念を放棄したわけではなく、今もそのまま無傷です。私としては、人生の理想・理念を貫き、実現するためにこそ生きる場・働く場を変えたつもりです。従いまして気概は今までよりなお一層高くなっているのを感じます。
医療はヒトのため、社会のためにある。このスローガンは普遍であり、人類が続く限り永遠に真実であり続けます。社会に健全な医療を安定的に提供し続けるためには、経営が安定していなければなりません。最近、COVID-19のパンデミックのため、多くの医療機関が苦しい経営を強いられています。しかしながら、このような時にこそ、地域における自院の真価がどこにあるのかを知ることが出来るのかも知れません。「人間万事塞翁が馬」という格言にあるように、運・不運は定まるものではありません。不運と思ったことが後に運を開くことがあるように、結局はどんな状況にあっても、生き方を誤らないことがその後の開運につながると信じていたいものです。
長い前置きになりましたが、いよいよ札幌美しが丘脳神経外科病院で、私の診療がスタートしました。ANA直行便で、8月12日(火)に小松から新千歳に飛びました。お盆の時期でしたが予想通り、小松・新千歳いずれの空港もCOVID-19の影響でがらんとして異様な光景でした。新札幌駅前のホテルに泊まり、翌水曜と木曜の二日間、外来診療を行いました。まだ私の患者さんは少ないですが、私が執刀した患者さんが遠方から受診してくれました。ありがたいことです。
同院の理事長と院長のことを少し触れておきます。高橋理事長と米増院長は札幌医科大学卒の私の後輩で、脳神経外科医として経験豊富で実力派。外科医に珍しく、ともに人柄は温厚で、患者さんへの思いは熱く深いと直感しました。さらにどんな医療を提供したいか、どんな病院を作りたいかなどを聞かせてもらいました。彼らの明確な理念・計画を知ることができ、私に残された医者人生が彼らと共にあることを大変嬉しく思いました。
滞在中、札幌在住の弟夫婦と居酒屋で久しぶりに楽しい時間がもてました。97歳になる母親が札幌の施設に入所していますが、道外からの面会者の制限が厳しく、今回は顔を合わせることができませんでした。長らく顔を見せられずにいたのですが、コロナが落ち着くのを待つほかなさそうです。
8月14日(金)にANA直行便で新千歳空港から帰路につきました。およそ1時間半弱の飛行時間で、全体を通してさほど疲れを感じずに済みました。
こうして、私の最初の「診療の旅」が無事終わりました。第2回は、8月25日から28日を予定しています。
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E.A 43歳 女性 神奈川県 続きです。
仕事は継続しながら、治療をしていますが、右足にも症状が広がったため、歩行も支障がでており、思うように歩けないのが悩みどころです。ただ今診ていただいている脳神経内科の先生はいろいろ相談にも乗ってくださって安心しております。足首の背屈は脊柱管狭窄の影響もあり、なかなか改善がみられませんが、リハビリも継続して経過をみていきます。腰の方は下肢の筋力低下による代償運動のせいで、腰痛があることもありますが、比較的安定しています。先生にもたくさんご相談にのっていただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
EA(43歳、女性、神奈川県)さんへ
多巣性運動ニューロパチーという、希な難病の診断を受けたのですね。もともとの腰部脊柱管狭窄症に同疾患が続発したということでしょうね。現在、信頼できる脳神経内科医の治療を受けておられるとのこと、ひとまず安心できますね。
背骨の痛みや四肢の痛み・しびれなどの症状は、カテゴリーの異なる各種疾患によって起こりえるので、診断そのものが困難なことが少なくありません。内科的疾患なのか、外科的疾患なのか、治療に関しては常にこのことを念頭において適切に軌道修正する柔軟性が治療医に求められると、私も今までの経験から身にしみてそう思います。
ダンスをもう一度できる体に戻りたいが、一貫して治療を支える希望の一つでしたね。同病に悩まれる他の患者さんのためにも、これからの経過報告や治療上のアドバイスなどをしていただければ、このブログで紹介させていただきます。
是非頑張って、精神的にも肉体的にもより満足できる状態へと改善が進むことを祈念しております。
from SHUJI SATO
E.A 43歳 女性 神奈川県
佐藤先生
ご無沙汰しております。以前から何度かご相談させていただいておりました。2012年、2013年、2019年に腰部脊柱管狭窄症に対しての固定術を実施、その後も筋力低下が進んでいたことをご相談していました。その後2020/3ころから、上肢にも症状が進み、脳神経内科を受診しました。最初は原因がはっきりしなかったのですが、最終的には多巣性運動ニューロパチーという患者さんも非常に少ない疾患との診断で、月1回の入院でIVIg療法を継続しています。筋力は一時的には回復しますが、また低下をしてしまうため、長期の治療になります。好きだったダンスもお休みしています。