高齢者の腰椎変性疾患:低侵襲手術の現状報告

超高齢者の腰椎低侵襲手術の有効性について

激痛と脱力で立てなくなった92歳男性(A氏)

[症状・経過]

A氏はこれまでに腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対して2回の手術を受けており、狭心症でPCIも受けていますが、精神的にはしっかりした方で自立した生活を送っておられました。ところが急に右腰部から臀部、大腿部に激痛が生じて生活は一変しました。座っている時や横になっている時に激痛は和らぐが、立ち上がると激痛が出現し、右下肢の脱力で転倒するようになりました。そのため、右大腿骨と肩を骨折して手術を受けています。

[激痛としびれ、下肢脱力の原因]

激痛と車椅子の必要な状態が続くことから、私の外来を訪れました。診察・検査の結果、右L2とL3神経根の支配域に感覚障害と右大腿四頭筋の筋力低下と筋萎縮を認めました。画像検査では、多椎間に腰椎症性の脊柱管狭窄と椎間板ヘルニアを認め、過去の2回の手術の影響によると思われる両側L3の分離症を認めました。この分離症と関連して、右L3/4の椎間孔の高度狭窄を認めました。症状と神経障害の特徴、画像所見から、A氏の激痛と起立障害の原因は、L3の分離症による椎間孔狭窄症と診断しました。

[低侵襲手術の選択]

それまでA氏を治療してきた医師は、手術には固定術が必要としたが、超高齢であることや心疾患などの基礎疾患から手術を見合わせてきました。その判断は医師として無理のないことであったと思います。しかし、私は、小切開の低侵襲手術によって椎間孔内で圧迫された神経根をピンポイントに除圧することで痛みは軽減し、立位・歩行が可能になる可能性があることを説明したところ、本人と家族は慎重に検討された結果、あらゆるリスクを理解、受け入れたうえで手術を強く希望されました。

[手術治療の結果]

手術は、2cmの切開で顕微鏡下に右L3/4の分離によって高度に狭窄した椎間孔を拡大し、L3神経根を除圧しました。手術時間は2時間以内、出血量は10ml以下と予定通りに終了しました。驚いたことに、術後速やかに激痛は軽減し、翌日から歩行訓練を開始することができ、1週間で自宅に退院しました。現在は、痛みなく生活は自立し、散歩を楽しんでおられます。

[私からのメッセージ]                                                                 超高齢者であっても、腰椎変性疾患による症状の原因部位が特定できたなら、痛みが少なく、体に優しい低侵襲手術でピンポイントに神経除圧を行うことで痛みやしびれ、歩行障害を改善させることが期待できます。

大事なことは、諦めずに有効な治療法を求めることです。

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