患者さんを見捨てない

患者さんの人生に伴走する
― 五千例の手術が教えてくれたこと ―
五千例を超える脊椎手術を経験して、私が到達した一つの結論がある。
それは、脊椎外科医の仕事は一回の手術を成功させるだけではないということである。
腰椎変性疾患は加齢によって発症し、進行する病気である。
一つの病変を治療しても、新たな病変が生じることがある。
再発することもある。
別の部位に問題が起こることもある。
つまり患者さんは、生涯にわたって腰椎変性疾患と向き合っていかなければならない。
だから私は考えるようになった。
脊椎外科医にとって本当に重要なことは何なのだろうか。
それは、一回の手術の結果だけではない。
患者さんが再び治療を必要とした時にも、適切な医療を提供できることである。
何度でも対応できることである。
私はそのために骨をできるだけ温存しようと考えた。
筋肉をできるだけ傷つけないよう努めた。
身体への負担を減らそうと考えた。
それは今回の手術のためだけではない。
患者さんの未来のためである。
私は五千例の手術を通して学んだ。
手術はゴールではない。
患者さんの人生の一場面に過ぎない。
脊椎外科医は、一度手術をしたら終わりではなく、その後の人生にも責任を持たなければならない。
患者さんの人生に伴走する存在でなければならない。
現在の医療には、一度手術した後は二度目の治療が難しくなる現実も存在する。
その結果、再び痛みに苦しみながら適切な医療にたどり着けない患者さんも少なくない。
私はそのような患者さんを行き場を失った医療難民にしてはならないと思う。
痛みに苦しむ患者さんに、何度でも手を差し伸べることができる脊椎外科医でありたい。
それが五千例を超える手術経験の中で、私がたどり着いた脊椎外科医としての境地である。
目の前で苦しんでいる一人の人間だからである。
脊椎外科医にとって本当に大切なことは、手術を行うことではない。
患者さんを見捨てないことである。
それが私の脊椎外科医としての矜持である。
私はそう考えている。
腰椎変性疾患は生涯にわたって患者さんにつきまとうことのある病気である。
だから脊椎外科医もまた、患者さんの人生に伴走する存在でなければならない。
私はそのような医師でありたいと思う。


